釣果情報

第34回遊漁船雑学講座

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皆さんこんにちは!
松丸、更新担当の中西です。

 

 

“働き続けられる現場”

 

 


 

遊漁船の価値は、船そのものだけでは決まりません。釣り場の選定、潮の読み、操船、安全管理、そしてお客様へのガイド。これらを担う“人”がいて初めて成り立つ仕事です。ところが近年、遊漁船業界は深刻な人材不足に直面しています。高齢化、担い手不足、技能継承の断絶。現代の課題は「人がいない」だけでなく、「人が育ちにくい・辞めやすい」構造にもあります。今回は、人材面の課題を具体的に掘り下げます。

 

 

■1. なぜ人が集まりにくいのか?現場のリアル

(1) 労働がハードで不規則

出航時間は早朝、帰港は夕方、片付けは夜。天候次第で予定も変わります。さらに、夏は猛暑、冬は極寒。海上は体力勝負です。体調管理が難しく、長く続けるには“働き方の設計”が必要になります。

(2) 収入が季節変動しやすい

釣りものや地域によって繁忙期が偏り、安定収入を得にくいケースがあります。

・オフシーズンの仕事確保
・悪天候による欠航リスク
・燃料費高騰の影響

が収入を不安定にし、若い世代ほど敬遠しがちです。

(3) 技能が見えにくく、評価されにくい

“釣らせる力”は数字で測りにくい上に、事故が起きなければ安全の努力も見えにくい。結果として、頑張っても評価されにくい仕組みだと、成長意欲が続きません。

 

 

■2. 技能継承が難しい理由:暗黙知が多すぎる

遊漁船のノウハウは、

・潮と風の読み
・ポイントの選び方
・船の当て方(流し方)
・お客様のレベル別対応
・危険予兆の察知

など、言語化しにくい“暗黙知”が中心です。ベテランは無意識にできても、新人には再現できない。

ここを放置すると、ベテラン引退と同時に品質が落ち、リピーターが減るという負の連鎖が起きます。

 

 

■3. 現代型の育成は「見える化×分業×標準化」

(1) 教える内容を分解してカリキュラム化する

いきなり「操船を覚えろ」ではなく、段階設計が必要です。

例)
①港内作業(係留、ロープワーク、清掃)
②接客(受付、説明、撮影、釣果処理サポート)
③安全(救命設備、緊急時対応、ヒヤリハット)
④操船補助(ポイント移動、速度、角度)
⑤釣りガイド(仕掛け、誘い、タナ、魚種知識)
⑥出航判断・全体管理

小さく刻むほど、成長が実感でき、教える側も育てやすくなります。

(2) マニュアルは“紙”より“動画”が効く

ロープの結び方、ライフジャケットの説明、フック事故防止など、動画で残すと伝わり方が変わります。

・新人が復習できる
・教える時間を短縮できる
・品質が安定する

現代の現場は、属人化を減らすツール活用が鍵です。

(3) 分業で負担を減らす

船長が全部抱えると限界がきます。

・受付・予約管理担当
・釣りサポート担当
・SNS発信担当
・整備担当(外注含む)

など、役割を分けることで働きやすくなり、結果的に人が残りやすい。特に繁忙期は「船長が休める仕組み」が重要です。

 

 

■4. “辞めない職場”の条件:安全と心理的余裕

(1) 休みの設計がある

連勤が続くと判断力が落ち、事故リスクも上がります。

・週1回は必ず休む
・繁忙期後に連休を取る
・欠航日は整備や学習日にする

など、会社として休みを設計しないと、現場は回りません。

(2) クレーム・迷惑客対応のルール化

理不尽な要求や暴言があると、スタッフの心が削られます。

・受付段階でルールを明示
・危険行為は即注意、改善なければ下船もあり得る
・飲酒、無断喫煙、撮影トラブル等の規約整備

「スタッフを守る姿勢」がある会社ほど、採用にも強くなります。

(3) 成長が見える評価制度

・安全管理を守った
・初心者を丁寧にサポートした
・SNSで集客に貢献した
・リピーターが増えた

など、釣果だけでなく“仕事の価値”を評価する仕組みが必要です。

 

 

■5. まとめ:人材は「採る」より「育てて残す」時代

遊漁船業は、地域の海の魅力を届ける誇りある仕事です。ただし、現代の課題は「根性で乗り切る」では解決しません。

・カリキュラム化で育成を再現可能に
・動画やチェックリストで標準化
・分業と休み設計で継続可能に
・スタッフを守るルールで定着率を上げる

こうした仕組みが整うほど、ベテランの技も未来へつながります。次回は、集客とデジタル化の課題を扱います。

 

 

■6. 採用の課題:求人を出しても見つけてもらえない

人材不足の背景には、そもそも遊漁船の仕事が「どんな仕事か分からない」という問題もあります。

・勤務形態(季節、時間帯)
・必要な資格や経験
・キャリアの伸びしろ(何年で何ができるか)
・福利厚生や休み

これらが見えないと、候補者は不安で応募できません。

▶採用で効く見せ方

・1日の流れを写真付きで紹介
・“最初はここから”の育成ステップを明記
・必要資格は「入社後に取得支援」など方針を出す
・船長候補、ガイド候補など将来像を提示

応募者が未来を想像できるほど、応募率は上がります。

 

 

■7. 資格免許の壁を投資に変える

遊漁船の現場は、免許や講習などのハードルがあります。これを個人任せにすると、人は育ちません。

・受講費用の補助
・受講日を勤務扱いにする
・先輩が勉強をサポートする

など、会社が投資する姿勢を見せることが重要です。結果として、育った人が“資産”になります。

 

 

■8. “副業・兼業”との相性を活かす

近年は副業人材も増えています。遊漁船は、

・週末だけ手伝う
・繁忙期だけサポートする
・SNSや動画編集だけ担当する

など、部分的な関わり方も可能です。最初は小さく関わってもらい、相性が良ければ継続や本格参加につなげる。こうした柔軟さが、現代の採用には効きます。

 

 

■9. ベテランの引退設計が技能継承を進める

ベテランが突然辞めると、技が残りません。

・週2日だけ出航を担当
・新人の同行日に“教える役”として乗ってもらう
・ポイント情報を地図化して共有する

など、引退を段階的にすることで、本人も無理なく、会社も知見を残せます。これは業界全体の課題でもあります。

 

 

■10. 多様な働き手を受け入れる現場設計

現代は、年齢や性別だけで仕事を分けるより、役割と安全導線を整えるほうが合理的です。

・重い荷物は台車や昇降補助具を導入
・滑りにくい動線、手すりの整備
・作業を2人1組で行うルール
・接客や事務、発信など“強み”を活かす役割

こうした工夫で、女性スタッフやシニア、未経験者も活躍しやすくなります。

 

 

■11. コミュニケーションの課題:小さな不満が退職につながる

海の現場は忙しく、言葉が荒くなりがちです。しかし新人はそこで心が折れます。

・指示は短く、理由も添える
・ミスは責めるより再発防止の仕組みに落とす
・「ありがとう」を言語化する

たったこれだけで、定着率は変わります。現代の人材課題は、技術より“人間関係の設計”にあることも多いです。

 

 

■12. 収入の安定化:オフシーズンの設計

オフシーズンに収入が落ちると、人は離れます。

・整備や船体メンテを計画的に入れる
・SNSやブログで来季の予約を積み上げる
・釣り教室、講習、イベント便などの企画
・地元の関連業(観光、加工、販売)と連携

“シーズン外も価値を生む”設計ができるほど、雇用は安定します。