釣果情報

第36回遊漁船雑学講座

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皆さんこんにちは!
松丸、更新担当の中西です。

 

燃料高騰・気候変動時代

 


 

遊漁船は自然を相手にする仕事です。ところが近年、その“自然”の変化がより大きく、より速くなっています。さらに燃料高騰、物価高、人材不足、規制強化など、外部環境の圧力も強まっています。つまり現代の課題は「現場努力」だけでは吸収しきれず、経営としての“続ける力”が問われる局面に入っています。今回は、持続可能性の観点から遊漁船の課題と打ち手をまとめます。

 

 

■1. 燃料高騰が直面する構造
遊漁船は移動距離が増えるほど燃料費が増えます。燃料は原価の中でもインパクトが大きく、価格変動が利益を直撃します。
・遠征便ほど利益が薄くなる
・釣れないと“走り回る”誘惑が増える
・値上げすると客離れが怖い

このジレンマを抱えたままだと、疲弊するだけです。

▶対策の方向性
・燃料費を前提にした料金設計(遠征は別料金など)
・便ごとの採算管理(燃料、人数、売上の見える化)
・走り回らない釣りの組み立て(ポイントの選択精度向上)
・地域で燃料購入の共同化や情報共有

「感覚経営」から「数値経営」へ。これが現代課題の核心です。

 

 

■2. 気候・海況変化で“魚のパターン”が変わる
水温の変化、黒潮・親潮の影響、台風の増減、異常気象。魚の回遊や釣れる時期がズレることは、現場で強く実感されています。
・例年の鉄板ポイントが外れる
・季節の釣りものが読めない
・欠航が増え、計画が立てにくい

これに対し「昔は良かった」と嘆いても、環境は戻りません。適応が必要です。

▶適応策の例
・複数の釣りものを扱える体制(季節分散)
・情報収集の強化(潮、水温、衛星データ、地域連携)
・初心者向け体験便など“釣果依存”を下げる商品づくり
・欠航時の代替提案(別日優先、割引よりも信頼重視)

“当たり年・外れ年”に振り回されない商品設計が大切です。

 

 

■3. 資源管理と地域ルール:守らない船が業界を壊す
遊漁船は海の資源を使って商売をします。だからこそ、乱獲やマナー違反が続けば、地域全体が損をします。
・サイズ制限を守らない
・持ち帰り過多
・釣り場でのトラブル
・ゴミ放置

こうした行為は、一部の事業者でも地域の評判を落とし、規制強化を招きます。

▶必要なのは「ルールを守る」だけでなく「守れる仕組み」
・持ち帰り上限の明確化(クーラーサイズの指導など)
・リリース推奨、締め方の案内
・漁協や地域団体との連携
・お客様への啓発(楽しみながら守る)

資源管理は“説教”ではなく、“未来の釣りを守る体験”として伝えると受け入れられます。

 

 

■4. 保険・災害・トラブル…事業継続計画(BCP)の必要性
現代は突発的なリスクが増えています。
・事故、ケガ
・台風、豪雨、地震
・感染症流行
・機関故障、部品不足

こうした事態で「止まる期間」が長いほど、資金繰りが苦しくなります。

▶最低限やっておきたいBCP
・緊急連絡網、対応フローの整備
・代替船、代替便の相談先(地域内連携)
・保険の見直し(事業用、賠償、搭乗者等)
・修理先、部品ルートの確保
・キャッシュフロー管理(固定費の把握)

“備え”があるだけで、精神的負担も減ります。

 

 

■5. これから伸びる遊漁船は「選ばれ続ける理由」を持つ
変化の時代に強いのは、単に釣果が良い船ではなく、総合力で信頼される船です。
・安全を徹底している
・初心者に優しい
・情報発信が丁寧
・料金が明瞭
・資源やマナーを大切にしている

この信頼の“積み重ね”が、環境変化や燃料高騰でも揺らぎにくい土台になります。

 

 

■6. まとめ:課題は多い。でも、やり方次第で未来は作れる
燃料高騰、気候変動、資源管理、規制、人材不足…。遊漁船の現代課題は確かに厳しいです。

しかし、
・数値で採算を把握し、料金と運航を設計する
・釣果依存を下げる商品を作る
・地域と協力して資源と信頼を守る
・BCPで止まっても“戻れる”体制を作る

こうした取り組みは、事業を守るだけでなく、お客様の満足度も上げます。海の魅力を次世代へつなぐために、今こそ“続ける力”を整えていきましょう。

 

 

■7. コスト時代の収益改善は値上げだけではない
値上げは必要な場合もありますが、伝え方と組み合わせが重要です。
・便の価値を上げる(初心者レクチャー、写真サービス等)
・オプションを整理して分かりやすくする
・定員の最適化(乗り過ぎで事故リスク増、少な過ぎで採算悪化)
・出航頻度と整備頻度のバランス調整

また、釣果処理(血抜き、神経締め、持ち帰りサポート)など体験価値が高いサービスは、満足度向上につながります。

 

 

■8. 地域連携が単独経営の限界を超える
遊漁船が単独で抱える課題は多いです。そこで地域連携が力を発揮します。
・欠航時に他船へ振替相談できる関係
・港全体でのマナー啓発(ゴミ、駐車、騒音)
・初心者向けイベントの共同開催
・安全研修の共同実施
・釣り場情報の共有(過度な秘密主義から適度な協力へ)

競争だけでなく共創が、地域の釣り文化を守ります。

 

 

■9. 次世代への投資:小型DX
設備は古くなるほど故障リスクが増え、結果的にコストが上がります。
・燃費の改善につながる整備
・予約管理で欠航連絡を迅速化
・顧客データ管理でリピーターを増やす
・安全設備の更新で事故リスクを下げる

一気にやらなくても、優先順位を決めて少しずつ更新する姿勢が重要です。

 

 

■10. 収益源の多角化:釣り便だけに依存しない
環境変化が大きいほど、収益の柱を増やすほど安定します。
・初心者体験便(短時間、近場)
・企業研修や団体レクリエーション
・釣った魚の加工・提携販売(地域連携)
・レンタルや物販(仕掛け、氷、クーラー等)
・動画やオンライン講座で知識提供

すべてをやる必要はありませんが、「自社の強みが活きる柱」を一つ増やすだけで、波に強くなります。

 

 

■11. 持続可能性を伝えると、選ばれる理由になる
環境配慮や資源管理は、コストではなくブランドです。
・持ち帰り上限の設定
・リリース推奨
・ゴミゼロ運動
・地元清掃への参加

こうした姿勢を発信すると、「ちゃんとしている船」という評価につながり、ファミリー層や初心者層に特に響きます。未来の海を守る活動が、未来の集客にもなります。これが現代の新しい流れです。

 

 

■12. 資金繰りの課題:小さな“余白”が命を救う
外部環境が荒れるほど、資金繰りの余白が重要になります。
・毎月の固定費(保険、係留費、ローン等)を把握する
・欠航が続いた場合の最低運転資金を見積もる
・繁忙期の利益を全部使わず、一定割合を積み立てる

この地味な管理ができると、故障や災害が起きても慌てずに立て直せます。

 

 

■13. 最後に:現代の課題は“変化に適応する力”
遊漁船は、海を楽しむ文化を支える大切な仕事です。だからこそ、変化を前提に、
・安全と信頼を土台にする
・数値で判断できる経営にする
・地域と協力して資源を守る
・人が育ち、続けられる現場にする

 

この4つを積み上げることが、10年先の未来を作ります。今日の一歩が、次世代の「釣りの思い出」につながります。